実習指導で役立つ! いまどきの看護学生のモチベーションUP術

まず、質問です。みなさんのモチベーション(やる気)が上がるのはどんな時ですか?

2分間ほど、状況やその条件を思いつく限りたくさん思い浮かべてみて下さい。そうすることで、このページを読み終えた時、みなさんのモチベーションが何故その状況で上がったのか理由がわかるようになります。

さて、どんなことが思い浮かびましたか?みなさんのモチベーションはどんな時に上がるのでしょうか。自分の事を認められたときでしょうか。嬉しいことがあった時でしょうか。患者さんから「ありがとう」と感謝された時ですか。それとも、大きな目標を達成したときでしょうか。

星の数ほどモチベーションが高まる状況は違うと思います。しかし、人のモチベーションが上がるにはある一定の共通法則とコツがあります。私が指導しているコーチング手法のモチベーション(やる気)アップの方法は、およそ10項目のスキルに及びます。

今回は、その中から1番大切なコツをお伝えします。

 一体、臨床指導者のどんな関わりや声かけが看護学生のモチベーションをアップさせているのでしょうか?実際に今、実習中という看護学生のアンケートの中から、特に多い意見を参考にしながら、考えてみましょう。

( アンケート協力:東京都 板橋中央看護専門学校 第2学科 26期生 )

Q1 指導者さんのどんな関わりや声かけで、モチベーションが上がりましたか?

<学生アンケートより多い順に抜粋>

指導者さんが、自分の思いや考えを肯定・共感してくださったとき。

話をじっくり聴いてもらったとき

ここはできているね。ここは「~したら」もっとよくなるよ。という肯定的な評価

「あなたはどんな風にしたいの?」と尊重してもらったとき。

  あなたなら、できるから頑張ってといわれたとき。

  

ここで、少しシュミレーションしてみましょう。

みなさんなら、どんな風にして看護学生のモチベーション(やる気)を上げますか?上記の例以外の関わり方や声かけで、2つほど考え出してみてください。

さて、いいアイディアは生まれたでしょうか?実際に学生指導を担当されている方は、「こうやってみよう」とか「以前こんな風に関わったら学生が元気になった」というようなことを思い浮かべ、ワクワクしてきた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

この「こうやってみよう!」というワクワクした感じを「内発的動機づけ」と言い、モチベーション(やる気)を上げるには最もパワフルな方法です。

では、この「内発的動機づけ」が1番高い人とはどんな人でしょうか?そう子供です。子供は知的好奇心が強く、目をキラキラさせて様々なことに興味を示します。そして、年代によっては何でも「自分でやる!」と自発性を発揮し、できたことによって有能感を高めます。

私はこれをワクワクサイクルと呼んでいます。学生の指導ではこのサイクルを上手く回すことをイメージしながら指導をするとほとんどの学生は意欲的になりました。

しかし、始めから上手くいった訳ではなく、内発的動機づけの必要性が身にしみたきっかけがあったからです。私は2年前まで高校の教員で、テニス部の顧問をしていました。部活動の休みの日にテニスコートに行くと、いつもはスポコンの生徒たちが、自主練では表情が生き生きと楽しそうに、しかも、いつもの何倍も真剣にテニスをしていることに気がつき愕然としました。

自分たちでミスをしたときのペナルティ(ミスを3回したものはコートをダッシュする)などのルールも作り、和気あいあいとしながらも、やる気満々に練習していました。

叱咤激励することが生徒のモチベーションを上げると信じていた当時の私は、同じ練習でも指示されず、自発的に行うということがこれほどまでに人の意欲を引き出すものかと驚いたことがあります。

実習指導の場面でも同じことが言えます。患者さんに「こうしてあげたい」という思いWANTを受け止め、自発的に計画させ、まず経験させてみるという関わりこそが大切です。

すなわち、モチベーションを上げるコツの第1番目は、ワクワクサイクルを回し、内発的動機づけを高めることです。

 

本来モチベーション(やる気)とは人間の欲求とも関連しており、人間の身体に自然に備わっているものなのです。ですから、やる気を引き出すにはこの内発的な動機づけをサポートするだけでよいとさえ言えるでしょう。

では、逆にどんな関わりや声かけがこのやる気(内発的動機づけ)を損ってしまうのでしょうか?再度、学生アンケートを基に考えてみましょう。

Q2 指導者さんのどんな関わりや声かけでモチベーションが下がりましたか?

<学生アンケートより1番多いものの抜粋>

 

  自分の思いや意見を、頭ごなしに否定されたとき。          

     

ダントツに多い回答は、自分の思いや意見を頭ごなしに否定されることでした。この関わりは、前述した自発性を損うことになり、ワクワクサイクルは回りません。実習生は否定されるから言わない方がいい」と発言しなくなったり、今度は失敗して否定されないようにと指示されないと動かない指示待ちになったりします。

人間のやる気は欲求に関連しており、本来的に備わっているものです。積極性がないように見える学生でも、看護計画を立てているときは多少なりとも「患者さんにこうなってほしいな」「こうなったらよくなるかなぁ」と思ってワクワクしています。

その気持ちに、火をつけてあげればいいのです。要は、学生の「~したい」という感情(WANTを伸ばしてあげることです。まずは、学生の思いをYESで受け止めてあげます。「そう思ったんだね。」「そうしてあげたいんだね」と受け止める。

例え、指導者が学生と違う意見や見方を持っていても必ず、第一声はYESです。「なるほど。」と学生の思いを受け止めたあと、そしてAND「私はこう考えるよ」などと自分の意見や提案を伝えていきます。

このような対話の仕方をYESANDといいコーチング的な対話術です。相手と反対の意見をいうとき、説得したいがために相手の意見を否定しがちです。しかし、相手は「否定された」と思うと意見の内容はそっちのけで感情的になってしまい、逆に自分の意見に固執したりします。相手を感情的にせずに自分の意見をいうスキルがこの、YESANDです。

ANDでの提案のコツはリクエスト自発性を引き出すには、アドバイスではなくリクエストです。なぜなら、アドバイスは「こうしたらいいよ」「ああしたらいいよ」と指示的で、考えずともアドバイス通りにやればいいため、自発性は必要なくなります。

しかし、リクエストは「こんな風にできる?」「こうしてほしいんだけど・・」と相手が自分の頭で考える必要があり、自発的にならざるを得なくなります。常に学生に考えさせ、実行に移させることでワクワクサイクルが回り、モチベーションが高まります。

しかし、つい「この計画、分かるんだけど、でもね・・。」とYESBATにしてしまいがちです。そして否定された相手は感情を刺激されモチベーションを下げてしまいます。

そもそも、なぜ否定したくなるのでしょうか?否定が起こる原因は、指導側(教員も同じ)の不安です。現代の多くの看護師さんは、日々の看護業務を「~しなければならない。」いわゆるMUSTでこなしています。

看護業務は厳しく、実際の仕事はMUSTの部分が多くなるのも確かです。その厳しさを知っている看護師の目で学生の未熟な看護計画をみると、これでは仕事にならないという不安が先行してしまいます。

又は少しでも最終の評価をよくしてあげたいための焦りかもしれません。いわゆるMUSTの目学生を見てしまうと、足りない部分ばかりが目に付きます。その結果、記録物や考え方の足りない部分への指導の割合も多くなります。

そして、気がつくと「こうしなさい」「ああしなさい」の指示が多くなり、学生の思いまでも「う~ん。でも・・。」とYESBUT(否定)してしまい、更に、学生のモチベーションが下がっていきます。

しかし、これは何も学生に限ったことではありません。我々も同じであり、否定されればモチベーションは下がります。

けれども、わかっているのに、ついそうしてしまうのは、我々も否定の中で育ってきたからです。いわば、育てられたように育てているだけの話ですが、現代ではそれが通用しなくなってきており、それを世代間のギャップといいます。

豊かになった現代の職業選択の基準は「やりたいこと」です。ある人は現代の若者のことを「やりたいこと探し難民」とさえよんでいます。それほど、現代では「やりたいこと」というのが重要な価値観になってきたのです。

数十年前の職業選択の基準は「食べていけるか」で、すなわちMUST「~しなければならないこと」でした。現代は「やりたいこと」で、すなわち、WANT「~したい」が基準になったのです。ですから、看護学生も例外なくWANT「~したい」を大切に考えているため、否定されるということにとても敏感になっているのです。

教員になりたての頃の私は、MUSTで指導していましたし、自分の生き方もそうでした。しかし、「学生を理解しよう」と学生のWANTを大切にするように関わることで、自分自身が自分のWANTを大切にできるようになり、幸せな「今」があります。

すなわち、人を育てるということは自分自身を育てることなのだということを、学生の指導を通して学ばせてもらいました。

現代的なWANTを大切にする生き方は実は、MUSTで生きるよりも楽しく、しかも持続的なモチベーションを上げる方法として注目されています。現在も成長し続けている大手企業では常識になりつつある考え方でもあります。

では、どうやってWANTを大切にし、MUSTを育てればいいのでしょうか。それは、感情「~したい」と思考「~しなければならない」を分けることです。

指導側(教員も同じ)は、表面化している看護計画や看護診断という思考の部分に大きく焦点が当たります。指導するときは、その根底にあって表面化していないWANT(感情)を感じながら感情の部分にも焦点を当てていくようにします。

例えば、計画が的外れなとき、「どんな風に思って立案したの?」とか「患者さんにどうしてあげたい?」と感情で答えることができるように関わります。

そして「そう思ったんだね。」と受け取る。次に、具体的な計画の不足な部分を指導していくようにします(思考)。

つまり、感情と思考とを分け、始めは感情に焦点、次に思考という風に関わります。そうすると、記録や計画に妥当性がなくとも、思い(感情)だけは受け止めることができ、学生も全てを否定されたという受け取り方をしなくなります。

人間の行動には必ず動機があり、そこに光を当ててあげることで足りない思考を高めていこうという気持ちが湧いてきます。つまり、深いアセスメントや具体的な計画を立てられるようになりたいという感情(WANT原動力になるのです。

そして本来、学生の「~したい」という感情(WANTは、個人の自由な感情や欲求で、否定されるべきものでもありません。

思考は指導できても、相手の感情は相手にしか自由にできません。そして感情はもっとも人間をパワフルに動かす原動力でもあります。であるなら、感情を上手く味方につけて、指導できればいいわけです。

自発性は「~したい」という感情WANTを受け取ることで強化され、ワクワクサイクルが回り始めます。サイクルが回り始めると、学生の目は輝きを増します。困難な場面にもチャレンジし、その結果から学び有能感が得られます。そして、その姿勢が身につくとモチベーションの自家発電ができるようになっていきます。

モチベーション(やる気)UPのコツ

 1 ワクワクサイクルを回し、内発的動機づけを高める

 頭ごなしに否定しない。  YES  BUT   ×

 アドバイスよりリクエスト YES  AND  ○

    思考と感情を分ける

     WANTを大切にし、MUSTを育てる

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学生指導パート2 


技術は細分化(コマ切れ)にして習得させる

注射の技術演習などで、学生が上手くできないとします。「あの学生って技術だめだよね~」本当にそうでしょうか?確かに手先が器用で、すぐに技術を習得する学生も多くいます。

しかし、一連の動作が上手くいかなくとも、技術をコマ切りしに実践させるとほとんどの学生ができるようになります。なぜなら、技術は一連の流れで見えていますが、実は複数の動作の集合体であり、本来は段階を踏んだ指導が適するからです。

一口に注射といっても患者さんへの説明、注射器に薬液を吸い上げる動作、手をしばり、血管を浮き立たせる動作、血管を選択し針を刺す動作、注射器に血液を逆流させる動作、薬液を注入する動作と6動作に分けられます。

この6動作のどの部分ができないのかを分析し反復練習を繰り返し、習得した時点で一連の動作として行わせます。すると、どんなに不器用な学生でも必ず、できるようになります。

私が高校のテニス部の顧問をしていた頃、あゆみというジャンピングスマッシュができない生徒と出合いました。あゆみはテニス部を背負って立つ部長であり、人一倍ガッツのある生徒でした。

しかし腕力はあるものの、体が硬く、肩もリズムよく回せませんでした。そして何より、困ったのは、右足で後ろに下がりながらのジャンプが出来ない事でした。あゆみは部長で団体戦の1番手。チームの勝敗の鍵を握る選手でした。

そこで、何としてもジャンピングスマッシュができるようになる必要がありました。この選手はインターハイもねらっていたこともあり、このジャンピングスマッシュは決勝戦に進出するための登竜門的な習得すべき技術でした。

ですから彼女も本気になって私の指導についてきました。指導はジャンピングスマッシュの技術をコマ切れにしたもので、まずは右足での後ろへのジャンプを練習させました。テニスコートの端から端まで5セット。

そして、ジャンピングスマッシュには大胸筋(胸の上の方)がリズムよく回せる必要がありますが、彼女はこの回転を産まれて始めて体験したような動きしかできない状態でしたので、大胸筋の回転訓練として、体をねじる練習30回をノルマに。最後に肩が回らない事に関しては、体育教材のかなり重いボールを目標地まで投げるというハードな訓練を。

これらを一冬練習することで、ついに春にはジャンピングスマッシュが完成しました。あゆみはこの後、200チーム強の参加チームの中で第4シード(4番目に強いであろうと考えられるチームのトーナメント上の場所)を獲得するまで強くなりました。

勝負の要の場面では、このジャンピングスマッシュを炸裂することができていました。この事例を通して技術を細分化する、すなわちコマ切れにして教えることの重要性を実感することができました。

教員が学生の「できない」に遭遇したとき1番に考えてほしいことは、学生を責めることではなく、技術をコマ切れにして教えられるまで細分化してあるかということです。

自分が簡単にできる事を学生が出来ないからと言って「できない」と決め付けていないでしょうか?さあ、「学生は注射という技術のどの部分ができないのですか?」と問われたとき正しく答えられ、技術を習得させることができるでしょうか?

答えがノーなら、教える事を科学していく必要があります。「できない」のは学生が悪いのではなく、教える側の技術の不足の可能性が高いといえるでしょう。

「名選手、名監督に有らず」とはよく言ったもので、教える側がすぐできるタイプの人間であれば、自分ができるので、できないことがよくわかりません。

インターハイや国体で優勝した選手が監督になり選手を育てる側に回っても意外に、強い選手を育てることが出来ず、テニスの経験がない教員の方が優勝に導いたりすることが多いのは、前述のように教える側が技術習得に苦労していない分、指導力がないためといえるでしょう。

何故できないのか、どこができないのかを解明でき、出来るように導くことこそが教える事を専門にするもののあるべき姿であると思います。

そんな私も、テニスでは3回、国体に出場した経験をもつ選手でしたが、このジャンピングスマッシュが「できない」ということが何故なのか?理解できませんでした。

何故右足ジャンプができないのか、何故、胸筋を回せないのか?肩が回らないのか?理解できませんでした。そこで、当時一緒に顧問を引き受けて下さっていた体育の鈴木先生に相談した所、技術を細分化(コマ切れ)する必要があることを教わりました。

体育の授業では技術を細分化(コマ切れ)にすることで、「全員ができる」というところまで持っていくことが多いそうです。例えば、跳び箱5段を40人全員に跳ばせたい時、跳べない生徒が出てきます。そうした時、技術を2段階に細分化(コマ切れ)し、教えるそうなのです。

まず、跳び箱を2つ用意します。1つ目は踏み切って手を跳び箱の前方につき跳び箱の中央に座るまでの動作までを、2つ目は跳び箱に座った状態から腕の筋力を使って跳び、着地するまでの動作と分けて練習をさせるのだそうです。

2つの段階ができるようになった時点で一連の動作をして統合させると、それまで跳べなかった生徒が簡単に跳んでいくようになるものだと教えて頂きました。

要するに、踏み切りが怖くてできないのか、腕の筋力と使い方が悪いため自分の体重を前に押し出すことができないのかを見極め、パーツに分けて指導していくことが大切なのだと。

技術習得についての極意を教えて頂き、もう一度あゆみのスマッシュの現状を考えていくと、右足でジャンプしたことがなかったこと、胸筋を使う運動の不足で胸を回せないこと、肩を回す運動の不足によって「できない」ということがわかり、細分化したトレーニングをしたおかげで、あゆみのジャンプスマッシュを完成するサポートが出来ました。そして、なんと言っても成功の要因は、あゆみのひたむきさでありました。

「チームで勝ちたい!」個人戦で、「インハイに絶対に行きたい」という明確な目標があり、その情熱にとことん関わってあげたい!と私も本気になったことで、教えるということをコマ切れにし、どうにかジャンピングスマッシュをできるようにしてあげたいと心を動かされました。

教える側と学ぶ側の姿勢が合致したこと、相手との深い信頼関係が成功に結びついたのであると思います。

看護の技術の習得であっても同じであると思います。未来の患者さんのために正しい技術を習得するために、教える側と教えられる側の姿勢の維持と、技術の細分化(コマ切れ)のスキルを用いて、実りある技術演習をさせていただきたいと思います。

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