部活やめます パート1

部活やめます パート1  ~メタモデルの質問のすすめ~

K太 「先生・・・いろいろ考えたんですけど、部活やめます」

私  「部活やめたいんだね。」・・黙る・・

K太 「・・・はい・・いろんな事が重なって・・・」深刻そう

私  「何と何が重なったの?」①

K太  [えっ?ええっと・・・部活とバイトが重なって・・・。]

私  「バイトもしてるんだ・・重なりを本当はどうしたいの?

K太  「本当は部活したいんです。テニス大好きだし、やるなら半端にするのは嫌なんです。でも俺、進学もしたい。だと部活を続けるのは無理なんです。」

私  「進学する人は部活を続けられないってどうして言えるの?」②

K太 「進学するにはもっと勉強しなきゃだめだってうわさです・・」

私  「ほう・・?じゃ、何番に入ってたらいいの?」③

K太 「????えっ????何番くらいなんですかね?」

私  「うん。君たちのクラスは例年より平均点が10点は高いからなあ・・10番代に入ってれば大丈夫なんじゃないかな。K太は何番?」④

K太 「あっ、10番代です・・そのくらいです。俺ん家は、お金ないんです。入学金も高いし、バイトもしなくちゃ悪いんです。俺、長男だから!」

私  「ほほう。しっかりしてるね!で、いくらバイトでかせげば進学できんの?」⑤

K太 「????えっ????一万くらいですかね・・・」

私  「入学金はいくらで、いくらの不足分を稼げばいの?」⑥

K太 「入学金は・・・・100万くらいだと思います・・・でもいくら足りないのか・・わかりません・・」

私  「そうか、そうか、K太。K太は優しいから親に心配かけたくないんだね!よくわかったよ。月一万かせいだとして1年で12万だよ。引退するまで18ヶ月あるから、18万貯まるとして後の82万どうするの?」

K太 「そうですよね・・・バイトでも足りないんですね。俺、全然具体的にいくらいるのかとか考えてなかったんですね・・・⑦ バイトしても足りないんじゃ、バイトの意味ないっすね。」・・解ったという表情・・

私  「もう一度、お母さんと話してごらん。毎回試合見に来てくれるお母さんだもん、テニス続けてほしいと思っていると思うよ。今のK太の気持ちをそのまま伝えてごらん、そしてまた明日、一緒に考えよう」

・・・・・次の日・・・・・・

K太 「先生!!俺テニスやります!!」・・力強い!!!・・

私  「ほう。よかった!お母さんと話せたんだね。それで?それで?」

K太 「はい! お前が心配しなくていいって言われました。でも嬉しいって!進学の資金なけりゃ、そもそも進学希望してる時に無理だって言ってるって。        

弟にもお金かかるから節約しなくちゃという事だったみたいです。テニスさせたいって!」

私  「そうか。そうか。よかったね!で、どうする?

K太 「それで、俺、考えたんです!部活はさせてもらうから、勝てるようにがんばる!そして、あまり足しにはならないかもしれないけど、少しでもお金も稼いで、親も楽にしてあげたいから、夏休みバイトします。先生、俺、休む時あるけどいいですか?」・・・⑧

私 「よし!じゃ、それでいこう!それで、テニスも半端は嫌なんだよね?

さあ、半年後、夏休みにみんなが部活やっていて、K太はバイトしている。どんな気持ちがする?・・・・・・☆フューチャーペース☆⑨・・・・・

K太 「・・・・・沈黙・・・・俺、バイトの日は走ります!朝早起きして20キロ。休んでも負けたくないから、走ります!!先生ありがとう」

私  「K太が全部考えて解決したんじゃん。聴いただけだよ。すごいね!さすが長男だ♪」

K太 「両立してみせます!よ~し」・・・意欲満々・・・

私  「か~っこいい♪ K太! よっ!男だねえ~惚れちゃうなあ・・」

K太 「やめてくださいよ~先生~」

彼は男兄弟2人の兄で、しっかり者のよくできるお兄ちゃんでした。彼のお父さんは、単身赴任が多く小さな頃からお母さんを守ろうと言う気持ちが強かったようです。お母さんに負担をかけたくないと言う気持ちから、バイトをして家計を助けなければならないと考え、部活をやめるという決断に至ったようです。

が、テニスは大好きという言葉や、「辞めます」と言った表情が深刻そうな感じでした。ここは、何がおきているのか彼に聞いてみる必要がありました。混乱の原因を具体的にしていくためにメタモデルの質問をしてみることにしました。

「いろんなことが重なって・・」に対して「何と何が重なったの?」①と聞くことで、いろんなことと大きく意識していることを小さくするチャレンジをしてみました。すると、

いろんなことと意識していたことは「バイト」と「部活」の2つになりました。成功です。そして次に「進学する人は部活を続けられない」という思い込みがありました。進学するという(原因)→部活を続けられない(結果)に結び付けて考えていました

それは彼がそう考えているだけで、本当ではありません。両立しているひとはたくさんいるし、両方があるから、バランスがとれているということもあります。ただ、K太くんの中ではそうなっているということ。

それを否定するのでなく、効果的な質問をしていくことでK太の思い込みをクリアーにしていくことにしました。②の質問に対して「うわさです」と答えています。ここで、彼のこの考えがそんなには根拠がないものだということが解ります。

そして、更に、③~⑥の質問で曖昧な部分やK太が省略したり、一般化したりしていることを明らかにするための質問をしています。そうすることで⑦の「具体的には何にも考えていなかった」ことを悟りました。

お母さんの節約しなきゃ!といった言葉をダイレクトに受け、明確な計画もなく、ただ漠然とバイトや母のために何かしなければ!という気持ちだったのでしょう。

このようにメタモデルの効果的な質問をすることだけで、相手が混乱している状況から、具体的に何かしなくては。というレベルにチャンクダウンすることができます。

そして、⑧で自分の考えが整理できすっきりしています。人の話を聴くということは、本当はこのようなことであると私は思っています。その人が何故そう考えているのか、そしてどうしたいのか。このことだけに焦点をしぼるだけでいいのです。

相手を変えようと、自分の価値感や考えを押し付けることが話しをきくことではないのです。⑨のフィチャーペースとは相手に未来で疑似体験してもらうということです。ここで、私はK太が部活をしていない時あせりが出てくるのではないかと推測したため、この質問をしてみました。

K太はがんばりすぎるほどがんばる男の子だったので、テニスもするなら半端は嫌だと言っているところからみると、バイトをしている夏休みが思い描けたため、⑨のフューチャーペースになりました。

結果、彼はバイトのときは走り、来るであろうあせりに対して準備することができました。大成功!!!そして、自分の考えだけで整理がついた証に最後ではとてもやる気になっています。めでたし、めでたし。

人にアドバイスなどが無意味だということがよくわかった場面でした。人は結局は自分の考えで出てきたものしか扱えないのかもしれないというのが、最近の私の見解です。

今回のような例は最近多いと思います。結局はK太は「バイトがしたい」と言うことと「部活がしたい」という目標(アウトカム)の重なり(バッティング)が混乱の原因だったといえます。

部活を辞めたいといってくる生徒に辞めるとろくなことにならないと説教する教員は多いですが、それは、生徒が意欲がなくなったから辞めたいといっているという思い込みから発生することが多いと思います。

最近の生徒の何かを辞めたいということの原因は大抵がアウトカム(目標)のバッティングです。意欲がないのではなくありすぎるのです。ひとつに限定せず、たくさんのやりたいことがあるということです。

時代の変化なのかもしれません。教員の辞めてほしくないという思いで生徒の話を聴くことこそ、止めなければならないことだと思います。

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