相手と信頼関係を作るスキル

    相手とラポール(信頼関係)を作る技術○

 ラポールとは心と心の架け橋のことをいい、信頼関係という意味で用いられています。人間関係で最も大切なものはこのラポールです。私たちのように相手がある職業につく者にとって、ラポールが作れるということは必要不可欠な技術だと言えます。

 必要不可欠な技術・・・そう。ラポールを架けるのは技術でもあるのです。しかし、技術と表現されると嫌な気持ちになる方もいるかもしれません。なぜなら、人間関係は心が通じ合った結果できるものであるからです。

この考え方はコミュニケーション技術を駆使していく者にとって、1番大切なことなので、皆さんは心に刻んでおいて欲しいと思います。

まずは「心」相手を大切にしたいという想いがあって、次に技術という順番を守るということ。

私の伝えるコミュニケーション技術は、人間関係論の基本的な技術にNLP神経言語プログラミングという分野のスキルを盛り込んだもので、最高にパワフルなのです。

ですから、みなさんが講義を終えた時には、一瞬で向かい合う相手にラポールを架けることができるようになってしまいます

みなさんは切れすぎる刀をもった状態になるので注意が必要です。ちょっと刀を振り回しただけで、簡単に相手を傷つけられる凶器にもなるからです。

みなさんは、信じていた人から裏切られたという経験はないでしょうか?これは非常に堪えます。相手を信頼していればいるほど、心の傷が深くなってしまうものです。

友達でも恋人でもない人から、誤解されたとしても、そんなには傷つきませんが、親密な関係ほど人間は心を開いているためにダメージが大きくなってしまうのです。

みなさんはこれから学ぶスキルを身につけることで、対面する相手から深く信頼されるようになります。それに伴って、皆さんのちょっとした不用意な言葉や態度でも相手は深く傷ついてしまうようになるものだということをつねに、念頭において欲しいと願います。

名刀が名刀であるのは、使う武士の人としてのあり方がすばらしいために、後世に引き継がれてきたのではないかと思います。

刀を磨くと同時に自分の人間性も磨いていくことが重要です。それには、人と対面するときはつねに、自問自答する癖をつけることをお勧めします。

 「誰のためのラポールですか?」

 

 医療従事者ならば、患者さんに安心して過ごしてもらうためのラポールになっているでしょうか。決して、自分の業務を早く終えるために必要なラポールになっていないでしょうか。

営業マンなら、お客さんに本当に必要なものを提供するためのラポールになっているでしょうか。決して、自分の売り上げの目標達成のため必要なラポールになっていないでしょうか。

ラポールを架ける焦点は、つねに相手にあることが重要です。自分の利益のために相手を利用するためのラポールは切れる刀を振り回していることと同じです。

みなさんは、パワフルなスキルを持つことで天使にも、詐欺師にもなり得るのです

あなたの心が詐欺師であれば本心に相手が気づいたとき、関係は壊れ相手は深く傷ついてしまいます。そしてその報いは、今度は自分自身に向かってくるでしょう。

ですから、コミュニケーション技術がアップすればするほど、自分に焦点を合わせた交流になっていないか、振り返っていくことが大事になってくるのです。

そういう姿勢が相手を大切にするという行動であり、技術の根底にあることが大切です。では、心だけが整っていればそれでよいか、と言えばそれだけではありません。相手を大切にする心があって次に必要になるのが、コミュニケーション技術なのです。

私がみなさんに大切にしてもらいたい事が十分に伝わったでしょうか。

私の一番のメッセージが伝わったところで、天使を目指すみなさんと共にラポールを構築する最強のスキルを学んでいくとしましょう。

1)    ペース合わせと傾聴のスキル

バックトラッキング(伝え返し)

バックトラキングとは簡単に言うと相手の使った言葉そのままを繰り返すことをいいます。「なんだ、そんなことか」と思った方もいるでしょう。しかし、簡単なようで実はかなり難しいスキルなのです。理由は後からじっくり説明するとして、どんな風にするかという例を2,3上げてみます。

バックトラッキング 

       語尾をそのまま返す

       キーワードを返す

       要約して返す

Aさん 「昨日の夜から、お腹がしくしく痛むし、頭も、もやもやするんです。本調子でないっていうか・・・。風邪気味なんですよ」

① 「お腹がしくしく痛み、頭も、もやもやするんですね。」  語尾をそのまま返す

② 「風邪気味なんですね。」                キーワードを返す

③ 「昨日の夜から、本調子でなく風邪気味なんですね」    要約して返す

この時、1番大切なのは相手の使った言葉をそのまま返すということです。言葉とはその人の考え(心理地図)を表現しています。相手が星の数ほどある言語の中からその言葉を選んでいるにはそれ相応の訳があるのです。

ですから、不用意に言葉を聞き手がアレンジしてしまうと、相手はこの人にわかってもらえたと安心しないのでラポールは生まれません。

後で詳しく触れますが、人間には視覚的な感じ方が強い人と聴覚的な感覚が強い人、そして体の感覚が強い人に分かれ、それぞれの感覚からの表現が多くなります。

例えば、視覚の感覚が強い人は「話の筋道が見えた」と表現し、聴覚が強い人は「話の内容が理解できた」と話し、体の感覚が強い人は「話が呑み込めた」などと表現し、感覚の違いから使う言語が異なります。

したがって、相手がその言語を使うには、この身体的な感覚の違いなどもあるため相手の使った言葉をそのまま使うということで相手はより安心するため、ラポールが架かりやすくなるのです。

また、同じ言葉を相手から伝え返されることによって、「いや、そんな風に本当は思っていないな」などと、客観的になれ、話し手がより深く自分自身の感情に向き合うことができるという利点もあります。まずは、まずは体験して実感して欲しいと思います。

感情を反映をする

話し手が感情を表現してきたり、非言語的メッセージから、相手の感情が伝わってくる時に感情を受け止めてくり返すことを感情の反映といいます。

言語化された感情の反映

妊婦さん「出産は怖いんですが、上の娘のことを思うと早く産んで帰りたいんです。初めて母親と離れたので、とても心配なんです

看護師 「とても、心配なんですね」  

言語化されていない感情の反映

外来患者さん「診察って何時くらいになるですか?」 

時計をみながら眉間にしわがよっている。

看護師 「とてもお急ぎなんですね

特に言語化していない感情を反映され、それが嫌でなかった場合はとても理解してもらったという気持ちになるものです。

しかし、この技術は大変難しく、相手が言葉にしたくない感情を反映してしまうとラポールが切れてしまう可能性もあります。

そこで、お勧めしたいのが「これは、私の推測なのですが・・。とてもご心配されていらっしゃいますか?」などと、私がそう見えるという前置きをするという技術です。これはIメッセージ(アイメッセージ)と言われる技法で、後で詳しく学びます。

これならば、聴き手がそう思うというだけで話し手は否定ができる余裕があり安心感を与えることができるからです。

ミラーリング

鏡のように相手の姿勢や動作を合わせることをミラーリングといいます。仲のよい友達同士や恋人同士は無意識に動作やしぐさがぴったりとあっていたりします。

人間は動物ですから、相手と姿勢や動作が合うということが、以外にも安心感を生むもののようです。しかし、この技術も実は、中々難しい技術でもあります。

相手に意識されないように一呼吸おいて動作をまねたり、相手が話すことに夢中になっていることを見計らって姿勢を同じにしたりという工夫をすることが大切です。

みなさんが、自分に関する深刻な話をしている最中、相手が自分と同じ動作をしてくるとわかったらどうでしょう。物まねされているような嫌な気分にならないでしょうか。

ですから、自然に相手が気づかないような工夫をしながらこの技術を使うことがコツと言えます。

ペーシング(ペース合わせ)

 ペーシングで大切なことは、呼吸を合わせることです。その他、声のトーンやリズム速さなどの音声表現を合わせることなどを言います。

相手の呼吸に合わせるということは非常に有効で相手に何が起こっているのか推測するのに役に立ちます。

特に呼吸は随意筋という筋肉で自分で意識的に動かすことができるためか、深刻に悩んでいる時などは呼吸が止まっていることがよくあります。

自分自身とのラポールが切れた時呼吸が浅くなっていることがあり、精神状態と呼吸とは密接な関係があります。うつ傾向のある患者さんの中には「息苦しさ」を訴える人が多いのはこういった理由からだと言えるでしょう。

演習1) ペーシング演習

今から、2人組みになってじゃんけんをしてください。勝ったほうが、バービージャンプを20回やってみてください。できるだけ早くするようにしてください。

そして、20回終わったチームは腰掛けて、バービージャンプをしていない人がした人の呼吸に合わせてみてください。如何でしょうか。

バービージャンプした人  「はあ、はあ、はあ、はあ、はあ、」

しない人         「はあ、はあ、はあ、はあ、はあ、」

如何でしょうか。相手の体の状態がどんな風なのか、解ってきたと思います。話を聴いている最中に、相手の呼吸が深くなったり逆に早くなったりと変化を見逃さずにペーシングいていくと、相手のマップ(心理地図)や考えや気持ちを体感することができます。

人は言葉では「大丈夫です。」と言っても内心はドキドキで不安がいっぱいという時があります。そんな時、呼吸が早くなったり止まったりといった変化が起こっています。

そこをペーシングしていき相手の不一致※を観察していきその人の本心を理解していくように努めることができれば、相手を深いところから理解できるようになり、急速にラポールが架かります。

 

人間は動物でもあり、体の状態には精神が深く関連しているのです。相手の呼吸が荒くなり、苦しさを感じているようなら深呼吸を促したり、違う観点の質問を投げかけたりしていくのもいいでしょう。

または、相手の呼吸に合わせておきながら、徐々に自分のゆったりとした呼吸やペースに相手をリードすることもできます。これを、ペース&リードといいます。優れたセラピストはこれをいとも自然に行い、クライアントをリソースフル※な状態に導いているのです。

ペーシングを行いラポールが構築されると、今度は相手が自分にペースを合わせようとしてきます。そこをリードすることが大切です。リードしていく方向や状態については後半の章で詳しく勉強します。

不一致※    言語と非言語メッセージが合っていないこと。不自然な感じを受ける

リソースフル※ リソースとは資源、財産のこと。経験や能力、才能、資金、人脈などのことをいい、リソースフルとは、リソースに満ち溢れた状態をいいます。

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緊張を和らげるスキル~その1

オーディトリースイッシュ
テニスの指導をしていると、よく出くわすのが、ダブルフォルト(サーブを2回失敗してしまい1ポイント取られてしまうこと)の多い選手です。

勝敗を分けるゲームのクライマックス!そう、ここが正念場!という時に限ってダブる(ダブルフォルト)ことが習慣になっている選手がいます。

選手はもちろん、団体戦などで応援している者にとっても「・・・あ~あ・・・」と本当にがっかりしてしまいます。

ダブることが多い選手にサーブを出す前に感じていることや、見えるもの、聞こえる事を尋ねると、ほとんどの選手がダブるんじゃないかと思っていたと答えます。

自分の心の声(内的な会話)で「な~んかダブりそうだ・・・」とか「やばい、やばい。」などが聞こえていたりします。または、ダブってがっかりしている姿のイメージを見ていたり、体感覚で嫌だな~とドキドキしていたりと、明らかに普段と違うことが分りました。

教え子のT子はセカンドサーブの前にお父さんの声で「ダブんなよ!絶対に」というセリフが聞こえてくると言いました。T子はダブルフォルトが多く1試合中、3,4本と1ゲームを落すくらいの確率でした。

しかし、T子は団体戦の2番手として活躍を期待されているため、ダブルフォルトをなくす必要があり、このオーディトリースイッシュをしてみることにしました。


オーディトリースイッシュ

 T子の目の前にCDラジカセをイメージしてもらいます。電源の位置を確認しておきます。


 そして嫌な声が聞こえてきたら、CDラジカセの電源をすぐに切るイメージをするように話します。そして、試合でのセカンドサービスの場面をイメージしてもらい、実際に、「な~んかダブりそうだ・・・」とか、「やばい、やばい。」と聞こえてくるような状況をイメージしてもらいます。

また、彼女の一番、嫌なお父さんの声で「ダブんなよ!絶対に」という声が聞こえてきたら、CDラジカセの電源をすぐに切るように指示します。

それと同時に、A子から(A子はT子のペアで前衛)「大丈夫、絶対入るよ!」という言葉を右耳から5,6回繰り返してもらいます。本人が良い状態になったら終了し、声が聞こえなくなるまで繰り返します。


5,6回繰り返していると、T子が笑顔で「もう、大丈夫です。」との返答がありました。

そこで、実際テニスコートでセカンドサービスをしてもらうことにしました。本番の試合の緊張感を持たせるため、後輩に「ダブるんじゃない?」「どーせ、はいんないよ」などとヤジを飛ばしてもらうことにしました。1本、2本・・・10本、続々と入っていきます。

更にプレッシャーを与えるために、ダブルフォルトをしたら、コートを10周走るというペナルティも課してみました。それでもダブルフォルトには到りません。

そして、とうとう50本中、1本のミスなく打つことに成功しました。サーブを打っているT子の体はいつもとは違い、リラックスしていました。

肩の力は抜けており、練習の時と同じでした。T子は練習の時はサーブが入るのですが、試合となると、体全体に力が入っており、明らかにいつもの様子と違っていました。

彼女の緊張のもとは、サーブを打つ直前に聞こえてくる「絶対、ダブんなよ!」というお父さんの声のイメージでした。実際にお父さんが試合を観に来ているときはその掛け声をかけていたので、事情を話し、やめて頂きました。

しかし、お父さんが掛け声をかけなくとも彼女の記憶の中には、この掛け声がインプットされており、緊張のもととなっていたのです。

そこでこのオーディトリースイッシュで聞こえてくる声を消してしまうことにしました。結果は50本のサーブを打っている時、「絶対、ダブんなよ!」という声は聞こえず、ペアのA子の「大丈夫、絶対入るよ!」が聞こえていたそうです。

緊張しすぎる選手の多くはサーブの直前にT子と同じように、マイナスな言葉を聞いています。また、自分自身の心の声(内的な会話)で、「次、失敗しそうだな~」などの台詞を聞いていることが多くあります。

私自身、自分の試合でこの内的な会話が聞こえてくることが多くあり、ミスにつながっていました。メンタルが強い、弱いとよく言われますが、細分化していけばこのような事が関係しているといえるでしょう。緊張するタイプで・・・と一言でかたづけず、どんなことが緊張を呼んでいるのかを明確にして使うスキルを変えることが、緊張状態を和らげるコツといえます。

T子のように声が聞こえて緊張が増すタイプでは、この
オーディトリースイッシュが有効です。

T子の例はスポーツの場面でしたが、看護学生なら、看護研究発表時の緊張に、看護師さんなら、申し送りの前の緊張状態に、会社員ならプレゼンテーション前の緊張状態に、その他、大勢の人の前で話す時などにも有効なスキルです。

または、ちょっとしたことで落ち込んでしまう人なども、嫌な台詞や声が原因となっていることが多く、このスキルを使うことで、落ち込むことなく、問題解決に集中することができます。簡単にできる方法ですので、是非チャレンジしてみてください。

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